「Rustを最新版に更新したら、急にエラー画面(プログラムが止まった時に表示される記録のこと。専門的には”バックトレース”と呼ばれます)に見たことのない記号の羅列が出るようになった…」 「デバッガ(プログラムの中身を1行ずつ確認できる便利な道具)や、処理速度を調べるツールを開いたら、関数の名前が変な暗号のような文字列になっていて、どこで何が起きているのか全然わからない…」
もしあなたが今、こんな状況で不安になっているなら、大丈夫です。落ち着いて対処していきましょう。
結論からお伝えすると、これはあなたのパソコンやプログラムが壊れたわけではありません。2026年7月9日に公開されたRustの最新バージョン「Rust 1.97.0」で、プログラムの内部で使われる名前の付け方(シンボル名)のルールが、公式に新しい方式へと切り替わったことが原因です。故障でも、あなたの書いたコードのミスでもありませんので、安心してください。
この記事では、
- 今、具体的に何が起きているのか
- 今すぐ試せる具体的な対策(手順つき)
- この不具合は今後のアップデートで直るものなのか
を、専門用語をできるだけ使わずに、順番にわかりやすく解説していきます。
今起きている不具合・エラーの具体的な内容
まず、今画面に表示されている現象を整理してみましょう。以下のような症状に心当たりはありませんか?
- プログラムがエラーで止まった時に表示される記録(バックトレース)に、
_RNvCs69ykqA3nDx6_7mycrate4mainのような、英数字が羅列された読みにくい文字列が出てくる - Visual Studio Code などのエディタでデバッガ(プログラムを1行ずつ止めながら確認できるツール)を使っても、関数名の欄が意味不明な文字列になっている
- プログラムの処理速度を計測する「プロファイラ」というツールの結果画面で、どの関数がどれだけ時間を使っているのか、名前が読めなくて判断できない
これらはすべて、プログラム自体の不具合ではなく、「表示上の見た目」の問題です。動作そのものはこれまで通り正常に行われています。
なぜこんなことが起きるのか(かんたん解説)
プログラムをパソコンが理解できる形(コンパイルされたファイル)に変換するとき、Rustは中に含まれるすべての関数や変数に対して、他のプログラムの部品と名前が被らないように、内部だけで使う「あだ名(シンボル名)」を自動でつけています。この「あだ名をつける作業」のことを、専門的には「マングル(mangling)」と呼びます。
これまでRustは、C++というプログラミング言語でも使われている古い方式(Itanium方式と呼ばれるもの)を間借りしてこの「あだ名」を作っていました。ただ、この古い方式には
- ジェネリクス(型を後から指定できる仕組み)の情報がうまく残らない
- ルールが一部で統一されておらず、外部のツールが正しく読み取れないことがある
といった弱点がありました。
そこでRustチームは、Rust専用の新しいあだ名の付け方「v0(ブイゼロ)方式」を用意し、2022年頃から選べるようにしていました。そして2025年11月からは実験版(nightly)で標準に、2026年7月9日のRust 1.97.0でついに正式版(stable)でも標準の方式として採用されたのです。
新しい方式で作られたあだ名は _R から始まるのが特徴です。まだこの新方式に対応していない古いバージョンのデバッガやプロファイラは、このあだ名を「人間が読める名前」に変換(デマングル)できず、そのまま暗号のような文字列として表示してしまう——これが、今あなたの画面で起きている現象の正体です。
今すぐ試せる!具体的な対策と手順
原因がわかったところで、実際に試せる対策を順番にご紹介します。簡単なものから試していきましょう。
対策1:まずは「表示だけの問題」かどうかを確認する
慌てて何かを変更する前に、まずは状況を整理しましょう。
- プログラムを実際に動かしてみて、出力される結果(計算結果や画面表示など)がこれまでと変わっていないか確認します。中身の動作に問題がなければ、表示上の見た目だけの問題である可能性が高いです。
- ターミナル(黒い画面のコマンド入力ツール)で
rustc --versionと入力し、Enterキーを押します。表示されたバージョンが1.97.0以降になっていれば、今回のケースに当てはまります。 - 表示が崩れているのが「自分のプログラムのコード」ではなく、「デバッガ」や「プロファイラ」といった外部ツールの画面だけであることを確認します。コードそのものにエラーが出ているわけではないので、コードを疑って書き直す必要はありません。
対策2:使っているツールを最新版に更新する
これが最も確実で、多くの場合これだけで解決する方法です。
- Visual Studio Codeを使っている場合は、拡張機能(エディタに機能を追加する部品)の一覧から「rust-analyzer」「CodeLLDB」といったRust関連の拡張機能を探し、更新ボタンを押して最新版にします。
- パソコンにインストールされているデバッガ(gdbやlldbなど)がある場合は、お使いのOS(WindowsやMacなど、パソコンを動かす基本ソフトのこと)のパッケージ管理ツール(アプリを管理・更新する仕組み)から最新版に更新します。
- プロファイラ(処理速度計測ツール)を使っている場合も、そのツールの公式サイトで最新版が出ていないか確認し、案内に従って更新します。
- 更新が終わったら、一度パソコンやエディタを再起動し、再度プログラムを実行して表示が改善されているか確認します。
対策3:「rustfilt」という変換ツールを使う(更新してもまだ読めない場合)
ツールをすぐに更新できない場合や、更新しても表示が直らない場合は、暗号のような文字列を人間が読める名前に変換してくれる公式の補助ツール「rustfilt」を使う方法があります。
- ターミナルで次のコマンドを入力し、rustfiltをインストールします。
cargo install rustfilt - 読めなくなった文字列(バックトレースなど)が書かれたログを、rustfiltに通して変換します。例えば、プログラムを実行した結果をそのまま変換したい場合は次のように入力します。
./自分のプログラム名 2>&1 | rustfilt - すでにテキストファイルとして保存されているエラーログがある場合は、次のように入力するとファイルの中身を変換して表示できます。
rustfilt < エラーログのファイル名.txt - 変換後の画面に、意味の通る関数名が表示されていれば成功です。
対策4(応用編・上級者向け):一時的に古い表示方式に戻す
「どうしても今すぐ元の表示方法に戻したい」という場合は、一時的に古い方式(legacy方式)に戻すことも技術的には可能です。ただし、これはあくまで「時間稼ぎ」のための一時的な方法で、Rustチームは将来的にこの古い方式自体を完全に廃止する予定を発表しています。恒久的な解決策ではない点にご注意ください。
- 実験版のRust(nightly版。日々更新される試験運用向けのバージョンのことです)をインストールします。
rustup toolchain install nightly - プロジェクトのフォルダの中にある
.cargo/config.tomlというファイル(なければ新しく作成します)に、以下の内容を追記します。[build]rustflags = ["-Csymbol-mangling-version=legacy", "-Zunstable-options"] - 通常のコマンドの代わりに、以下のように実験版を指定してビルド(プログラムを実行できる形に変換すること)します。
cargo +nightly build - これで一時的に古い表示方式に戻せますが、あくまで応急処置です。落ち着いたタイミングで、対策2のツール更新を進めることをおすすめします。
公式のアップデートで直る?現在の対応状況
「これって、Rust側の不具合だから、次のアップデートを待てば自然に直るの?」と気になる方も多いと思いますので、現在の状況を整理しておきます。
結論として、これはバグ(不具合)ではなく、Rustの開発チームが意図的に、かつ事前に予告した上で行った仕様変更です。実は、この新しい名前の付け方(v0方式)は2022年から選べる状態にあり、2025年11月には試験版で標準になるなど、8か月以上前から段階的に周知されてきました。そのため「今後のアップデートで元の表示に戻る」ということは基本的にありません。
つまり、直すべきなのは「Rust本体」ではなく、あなたが使っているデバッガやプロファイラといった周辺ツール側、ということになります。これらのツールが新しい名前の付け方(v0方式)に対応さえすれば、表示は自然と元通り読みやすくなります。
なお、Rustチームは各種ツールの開発者向けに、新しい方式を正しく読み解くための変換プログラム(「rustc-demangle」というライブラリ。RustとC言語の両方の版が公開されています)を無料で公開しており、対応が進みやすいよう後押ししています。すでに多くの主要なツールは対応済み、または対応を進めている最中です。
また繰り返しになりますが、この変更はあくまで「表示上の名前の見た目」に関するものです。プログラムが実際に計算する内容や、動作の正しさには一切影響しませんので、その点は安心して大丈夫です。
まとめ
最後に、今回の内容を簡単におさらいします。
- Rust 1.97.0から、プログラム内部の名前の付け方(シンボル名)が新しい方式「v0」に標準で切り替わりました
- これにより、まだ対応していない古いデバッガやプロファイラで、
_Rから始まる読みにくい文字列が表示されることがあります - これはバグではなく、公式に予告された仕様変更なので、慌てる必要はありません
- 対策としては、①現状の確認 → ②ツールを最新版に更新 → ③rustfiltで変換 → ④(応急処置として)一時的に古い方式に戻す、の順に試してみてください
- 根本的な解決は、お使いのツールの開発元が新方式に対応することなので、気になる場合はツールの公式サイトやアップデート情報もあわせてチェックしてみましょう
今後も新しいアップデート情報が気になる場合は、以下の公式情報源を定期的にチェックしておくと安心です。
- Rust公式ブログ:https://blog.rust-lang.org/
- 週刊アップデート情報「This Week in Rust」:https://this-week-in-rust.org/
- Rust公式のGitHubリリースページ:https://github.com/rust-lang/rust/releases
一つひとつ落ち着いて対応すれば、必ず解決できる内容です。焦らず、ゆっくり試していきましょう。


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